2016.08.14
野球肘③(靭帯損傷)
前回は野球肘における骨、軟骨の損傷について書きましたが、今回は肘の靭帯の損傷について説明したいと思います。
野球で傷めやすいのは圧倒的に内側の靭帯で正式には「内側側副靭帯」と呼びます。
肘の内側に付き前腕の骨の外側への動きを制限する働きがあります。
野球の投球フォーム不良が原因で、負担のかかりやすいフォームを連続して行いボールの重さも相まって靭帯を損傷してしまうケースが多いです。
靭帯を損傷してしまうと肘を伸ばして前腕だけを外側にもっていく動きをした場合正常であれば靭帯が制御してくれるおかげで動きませんが損傷が見られると制御がないため正常と比べると前腕がより外側へ動くようになってしまいます。
投球フォームの中でボールが指から離れる前に腕を加速させます。その際に靭帯には負担がかかります.。
靭帯損傷があった場合、その腕を加速させるフェーズで靭帯をさらに引き伸ばそうという外側への力が働きます。
その状態で投球を続けていると靭帯の損傷が広がってしまう動きを続けることになってしまうため治癒を遅らせます。
保存療法では肘に固定を施し制限をかけることで炎症反応を引かせた後、前腕屈筋群の筋力強化を図ることで手術をすることなく完治することもできます。
しかし学生野球の練習は休めないことも多く監督に黙って痛みを我慢しながら続けていると重症化するケースもあり手術の適応になる可能性もあります。
有名なのは「トミージョン手術」と呼ばれる手術法で損傷した靭帯を切除し体の中の正常な腱を肘の内側に移植し靭帯の代わりをさせるもので、有名な野球選手では松坂大輔投手、ダルビッシュ有投手、桑田真澄投手などが行った手術法です。
我々は肘の症状や、徒手検査、ここに至るまでの道筋などから原因を特定するため患者さん自身で判断するのは非常に困難な場所ですので肘の痛みを感じたら一度ご相談ください。